一概に「経理の生産性を向上させる」というけれど、一体何をすればいいのでしょうか。その全体像を正確に把握できている人は少ないように思います。
よく見かける経理の生産性向上アプローチには、
(時間短縮)今まで30時間かかっている業務を15時間で行いなさい。
(人数削減)今まで8人で行っている業務を6人で行いなさい。
(日数削減)月次の締めを12営業日から5営業日でできるようにしなさい。
といったものがあり、これらを指示されたり、目標設定されることが大半を占めていると思います。
これらは確かに生産性向上の一面を表しています。
しかし全体像を視野に入れていなければ、効率は上がったけれども経理のレベルはそれほど上がっていない、という状況になってしまいます。
生産性の向上とは、経済学では生産活動に対する生産要素(労働・資本など)の寄与度、あるいは、資源から付加価値を産み出す際の効率の程度のことを指し、それらを向上することと言われています。要約すると、「人件費の削減と付加価値を生みだす際の効率化」つまり、省力化なのです。したがって「省力化」に特化したアプローチが多いことはある意味正しいと言えます。
しかし、どうでしょう?企業は常に、付加価値の創造・向上を行っています。経理部門も同様に付加価値の創造・向上が求められます。この変化していく戦略経営目線で将来的な付加価値を視野に入れることによって、全てを視野に入れた生産性向上を目指せるようになります。
多くの企業では、生産性向上施策は省力化となっており、付加価値の向上を意識していないというケースが見られます。
相当な労力をかけ一旦は、現状業務の省力化を図り人件費コストの削減ができたとします。この場合一時的な成果が得られた、となります。しかし、「新たに別のいくつかの指標を見たい」など企業の様々な付加価値の向上が求められるたび、省力化された業務フローを大幅に変更することとなり、幾度となく相当な労力を費やしたり、不必要な設備投資が必要となります。
このような状況では経理スタッフのモチベーションは低下しやすく、定着率の低下を招く恐れが高まります。繰り返される労力・不必要な設備投資・スタッフ定着率の低下等によって、実際は、生産性が低下しています。
付加価値の向上を意識した生産性の向上を行うには、付加価値の変化を予測し付加価値向上施策を創造し、その創造体系のなかで既存業務を効率よく遂行できる仕組みを考えることが必要です。そうです。従来からとても重要なスキルといわれた「創造力」が必要なのです。また、広範な知識や経験も必要となります。
これらを前提条件とした業務フロー構成・組み合わせ・コストをどれだけイメージできるか。これが経理部門に必要な「創造力」であり、そしてその組み合わせの中から最適解を導き出し、構築することが求められます。
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