経理担当者の“急な不在”に備える

経理部門は、企業の血液とも言える資?の流れを管理し、経営判断の根幹を支える極めて重要な部署です。しかし、その専門性の高さゆえに、担当者の長期不在は、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。産休、育休、介護休業といったライフイベントは予測可能な場合もありますが、いざその時を迎えても、具体的に何を準備すれば良いのか、どのように業務を引き継げば滞りなく運営できるのか、明確な道筋が見えていない企業も少なくありません。
本コラムでは、経理人材の?期不在に備え、企業が今から取り組むべき具体的な準備策を段階的に解説します。

経理人材の長期不在:見過ごせない多岐にわたるリスク

経理担当者の長期不在は、単なる一時的な人員不足という問題に留まりません。特に、経理業務が特定の担当者に集中し、ブラックボックス化している場合、そのリスクは計り知れません。

決算業務の遅延と混乱

日次、月次、四半期、年次決算は、会社の財務状況を正確に把握し、対外的な信用を維持するために不可?です。担当者の不在により、これらの業務が遅延したり、誤りが?じたりするリスクが?まります。

請求・支払業務の停滞

売上請求書発行や支払業務が滞ることは、資金繰りの悪化や取引先との関係悪化を招きかねません。

税務処理の遅れとコンプライアンス違反

法定申告期限のある税務処理の遅延は、追徴課税や信用失墜につながる可能性があります。

経営判断の遅延

タイムリーな経営情報の提供が滞ることで、迅速な意思決定を妨げ、ビジネスチャンスを逃す可能性があります。

内部統制の機能不全

経理業務におけるチェック体制や承認プロセスが担当者に依存している場合、不在時の不正リスクが高まります。

他の従業員への負担増加とモチベーション低下

残された従業員に業務が集中することで、負担が増加し、不満やモチベーション低下を招く可能性があります。


これらのリスクを最?限に抑えるためには、長期不在に備えた準備が不可欠です。

代替人員育成の盲点:引き継ぎ期間だけでは不十分

経理業務は、会社ごとの特有のルールや運用方法が多く存在し、属人化しやすい傾向があります。「業務マニュアルがない」「Excelや会計ソフトの独自の運用ルールがある」といった状況は決して珍しくありません。このような環境下では、たとえ代替人員を確保できたとしても、短期間の引き継ぎだけの業務遂行は困難です。
特に、育休や介護休業のように、ある程度の期間が予測できる場合でも、「その時になれば誰かが対応できるだろう」といった安易な考えは危険です。代替人員のスキルレベルの見極め、業務知識の習得、社内システムへの慣れなど、十分な準備期間と計画的な育成が不可欠です。

今、始めるべき不在リスク対策:段階的な準備ステップ

経理職の長期不在に備えるためには、事前の「想定」と「早めの動き出し」が重要です。以下のステップに沿って、具体的な対策を講じましょう。

ステップ1:現状業務の可視化とリスク分析

経理部門の現状を詳細に把握することから始めます。

業務の洗い出しと担当者の特定

経理部門でどのような業務が行われているかをリストアップし、各業務の担当者を明確にします。

業務の属人化度合いの評価

各業務が特定の担当者に依存している度合いを評価します。担当者しか分からない、マニュアル化されていない業務がないかを確認します。

緊急度の評価

各業務が、担当者が不在になった場合にどの程度緊急に対応する必要があるかを評価します。決算業務や支払業務などは緊急度が高いと言えるでしょう。

代替可能性の評価

各業務について、現状で他の従業員が代替可能かどうかを評価します。代替可能な場合は、その従業員のスキルレベルも把握しておきます。

ステップ2:業務の標準化とドキュメント化

属人化された業務を標準化し、誰でも理解できるようにドキュメント化を進めます。

業務フローの作成

各業務の流れを可視化した業務フローを作成します。

業務マニュアルの作成

各業務の手順、ルール、使用するシステムなどを詳細に記述した業務マニュアルを作成します。

Excel?会計ソフトの運?ルールの明?化

Excelファイルや会計ソフトの共有フォルダ、ファイル命名規則、入力ルールなどを明文化します。

ステップ3:代替要員の確保と育成

長期不在が予測される場合は、早めに代替要員を確保し、計画的に育成を行います。

社内での育成

既存の従業員の中から、代替要員候補を選定し、OJTや研修などを通じて必要な知識やスキルを習得させます。

外部からの採?(派遣/紹介予定派遣)

経理専門の?材派遣会社を活用し、必要なスキルを持つ人材を確保します。引き継ぎ期間を考慮し、早めに受け入れを開始することが重要です。

ステップ4:情報共有とコミュニケーション体制の構築

担当者が不在になった場合でも、必要な情報がスムーズに共有され、関係者間で連携が取れる体制を構築します。

情報共有ツールの導入・活用

クラウドストレージやチャットツールなどを活用し、必要な情報に誰でもアクセスできるようにします。

定期的な情報共有会議の実施

経理部門内だけでなく、関係部署との間で定期的に情報共有会議を実施し、業務の進捗状況や課題を共有します。

ステップ5:緊急時対応計画の策定

担当者が予期せず不在になった場合の対応計画を策定しておきます。

緊急連絡体制の確率

担当者への緊急連絡手段や、不在時の連絡先を明確にしておきます。

業務継続の優先順位付け

どの業務を優先的に継続するのか、一時的に停止しても良い業務は何かを事前に決めておきます。

外部専門家との連携

税理士や社労士など、外部の専?家との連携体制を構築しておきます。

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「経理専門」の人材派遣会社を戦略的に活用する

経理業務に特化した人材派遣会社は、単なる人員補充の手段としてだけでなく、不在リスク対策においても強力なパートナーとなります。

即戦力となる専門人材の迅速な確保

決算業務経験者、特定の会計ソフトの熟練者、税務知識を持つ人材など、必要なスキルを持つ人材を迅速に提案・派遣してもらうことができます。

柔軟な契約形態と期間設定

短期的な引き継ぎ期間から、長期的な代替要員まで、企業のニーズに合わせた契約形態と期間で人材を確保できます。

スキルレベルの可視化された人材データ

派遣会社の多くは、スタッフのスキル(簿記、Excel、会計ソフトなど)を詳細にデータ化しており、企業の求めるスキルに合致した人材を選定する際の重要な判断材料となります。

採用・教育コストの削減

自社で代替要員を採用・育成するのに比べ、時間とコストを大幅に削減できます。


経理専門の人材派遣会社を、早い段階から情報収集や相談しておくことで、より効果的な不在リスク対策を講じることが可能になります。

備えあれば憂いなし。今こそ経理部門のレジリエンス強化を

経理職の長期不在は、事前にしっかりと準備を行うことで、その影響を最小限に抑えることができます。必要なのは、「もしかしたら」という意識を持ち、早めに情報収集や体制構築に着手することです。
今、改めて自社の経理部門の状況を分析し、長期不在が発生した場合どうなるかを具体的にシミュレーションしてみてください。どの業務が滞り、誰に負担がかかるのか、そしてどのような対策が必要なのかが見えてくるはずです。
「備えあれば憂いなし」。今こそ、経理部?のレジリエンス(回復力)を強化し、いかなる状況下でも事業継続を可能にするための第一歩を踏み出しましょう。

 

 

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