「仕訳の中の格差を感じる」からこそ、私たちができること
~経理専門派遣会社としての本音~

第1章:経理派遣スタッフ時代の仲間が感じる複雑な気持ち

経理専門の派遣会社を経営する私たちは、日々多くの派遣スタッフと向き合っています。
経理派遣スタッフの皆さんが、現場でどのような思いで経理業務に取り組んでいるのか、私たちは決して「想像して理解しているつもり」ではありません。なぜなら、私自身もかつて派遣経理として現場で働いたことがあるからです。
経理の「現場」で、仕訳入力、請求書処理、決算補助、税理士とのやりとり…。経理実務を積みながら、少しずつスキルを伸ばしていった日々の中、ふと心に残る瞬間があります。
それは、賞与支給時期の仕訳処理の時です。社員の給与仕訳は「給与手当」「賞与手当」と整然と並びます。正社員の安定した待遇が数字として整理されるのを自分の手で処理しながら、ふと「経理派遣社員の私はここには含まれていない」と感じました。
経理派遣社員として入力している自分の仕訳は、別の勘定科目「外注費」や「派遣費用」という経費科目の処理になります。正しい処理ではあるけれど、会計仕訳という処理の世界では「自分の立場の違い」がはっきり映し出される瞬間でした。
そんな時に、派遣営業担当が、「○○さんは旅行に行くって言ってましたよ!」というお話がありました。「営業担当に悪気はないのは分かるけれど、派遣社員として働く現場の感覚を本当の意味で理解できていないんだな」と思い、経理派遣の自分は「会計仕訳の中では格差があるのだな」と感じました。


だからこそ、私たちは「経理専門」に特化した派遣会社を立ち上げた時、「派遣スタッフの気持ちを、表面的な共感で終わらせない支援をしたい」という決意がありました。
経理は専門職です。積み重ねた経理スキルは、確実に次のステージへつながるはずです。だからこそ、私たちの経理専門派遣会社は「経理キャリア支援までを含めて『派遣会社の仕事』」と定義しています。単に契約を管理するのではありません。登録している経理派遣スタッフのみなさんが経理職として成長していくための土台を用意し、派遣先と派遣スタッフの橋渡し役を本気で果たしています。それが、かつて派遣経理を経験した私たちが目指す「経理専門派遣会社の本当の姿」なのです。


次章では、会計仕訳に表れるこの「格差」の構造がどのように生まれ、どう乗り越えられるのか。派遣契約の仕組みと、私たちがどのように向き合っているのかをお話しします。

第2章:「仕訳上の正しさ」と「現場の温度差」派遣契約という仕組みのリアル

経理の仕事は、常にルール通りに整理されていきます。売上は売上、費用は費用、支払は支払。どんな人が入力しても、正しい勘定科目へと自動的に仕分けられていきます。仕訳帳の中に感情はないので、派遣で働く経理スタッフの皆さんが感じる「仕訳の格差」という違和感は、とてもリアルで、そして複雑なのです。数字上は平等、でも立場は平等ではない。これが派遣経理の現場にある本当の現象です。私たち派遣会社が日々サポートしている経理派遣スタッフの皆さんも、同じ思いを語ってくれます。

  • 正社員の給与は「人件費」「給与手当」として安定的に計上される
  • 派遣スタッフの分は「外注費」「派遣費用」として毎月請求ベースで処理される
  • 賞与仕訳は社員だけ。自分は支給対象外だけど、その仕訳は自分が入力している

自分で自分の「経費処理」をしているような感覚は、実際に経理派遣として働いて、会計処理をしてみないと、なかなか本当の意味で理解しにくい感情です。給与仕訳、賞与仕訳の担当の場合、支給額も税引後の手取り額もすべて把握していると、余計にその“線引き”がはっきりと見えてしまい、経理のルール上は正しい処理ですが、経理派遣社員が仕訳を作成していると、寂しさを感じてしまいます。ここまでは経理派遣の仕事としては仕方ないところです。
しかし、ここに追い打ちをかけるのが、賞与時期の営業担当と派遣先企業の間で交わされる「○○さん、ボーナスで新車買うって言ってましたよ!」などの会話です。もちろん、悪気はないと分かりますし、むしろ営業としては「派遣先と良い関係を築こう」としての行動です。
ですが、この“派遣スタッフの繊細な感情”こそ、私たち派遣会社は最も理解しなければいけないと考えています。私たちが派遣スタッフだった頃、その違和感を何度も感じてきたからこそ、誰よりも共感できます。


仕訳は、立場の違いを正確に映し出します。そしてそれは、派遣スタッフが「成長の機会」を得られないままで放置されてしまう危険性とも表裏一体です。私たちは、経理という専門職だからこそ、派遣契約という枠の中でも確実にキャリア形成は可能だと信じています。むしろ経理業務は「経験を積んだ証拠」がとてもはっきり残る職種です。仕訳処理、決算対応、税務処理、予算実績管理、年次決算整理…。担当できる領域が広がれば、それ自体が次のステップを示してくれます。


では、派遣会社は何をすべきなのか。
ただ契約を管理するだけでは、スタッフの成長支援とは言えません。
だからこそ、私たちは派遣会社の立場から「本気の経理スキルアップ支援」に力を入れています。
次章では、私たちが取り組んでいる【具体的なスキルアップ施策】についてお話しします。

第3章:派遣経理こそ「成長が見える職種」 私たちが本気で支援するスキルアップの仕組み

派遣で働く経理スタッフの皆さんは、日々現場で着実にスキルを積み重ねています。仕訳入力だけでなく、月次決算の補助、年次決算の準備、税理士とのやり取り、システムの運用補助、管理会計の補助…。こうした積み上げは、数字としても証拠としても残るスキルです。経理という仕事の最大の特長は「成長が非常に可視化しやすい」点にあります。だからこそ、派遣という働き方でも、確実に次のステップを目指すことはできるのです。
私たちは経理専門の派遣会社として、この「成長が見える職種」であることを最大限に活かすために、本気のスキルアップ支援制度を整えています。それが、毎月1回の「スキルアップ研修制度」です。

研修は“会社負担・給与支給”の本気制度

研修は、派遣先の就業日とは別に、会社が用意します。受講中も給与が支払われる完全な有給研修日です。「働きながら学ぶ」のではなく、“学ぶ日が労働時間の一部”として確保されていることが、この制度の特徴です。
これは経理という職種が、制度改正・会計基準変更・税法改正といった「最新知識のアップデート」が絶えず求められる職種であるからこそ、継続的な学びを制度として支援すべきだと私たちは考えています。

現場直結の研修テーマ

講座内容も、ただの座学ではありません。研修テーマはすべて現場の実務に直結するものばかりです。

  • 仕訳の基礎・体系整理
  • 月次決算の整理と注意点
  • 年次決算の準備事項
  • 税務申告の基本構造
  • 法改正(インボイス制度、電子帳簿保存法、社会保険料変更等)
  • Excel・会計システムの活用実務

派遣先の業務とリンクさせる内容にすることで、「学んだことを翌日すぐに現場で活かせる」よう工夫しています。
派遣スタッフの皆さんからは「現場でぶつかった疑問を、研修でクリアにできた」「決算整理のポイントを理解して、次の繁忙期に自信がついた」という声が多く寄せられます。

派遣営業担当の伴走支援も本気で

この研修制度を活かす上で、重要なのが派遣営業担当の役割です。
私たちは営業担当を「契約管理者」ではなく「キャリアアドバイザー」と位置づけています。
定期面談では、以下のような伴走支援を行っています。

  • 研修参加状況・理解度の把握
  • 派遣先での担当業務内容の整理
  • 新たにチャレンジできそうな業務提案
  • 次のスキル目標の設定

例えば「今月は月次決算の仕訳整理も経験できましたね。来月はその内容を派遣先上司にも評価として報告しましょう」「年次決算前に引当金や税金計算の補助も挑戦できますよ」といった「成長の見える化」と「次の挑戦の提案」が営業の役目です。
こうしてスタッフの成長実績を営業が派遣先にしっかり伝えることで、「そろそろ正社員登用の検討ができるのでは?」という前向きな提案も派遣先にしやすくなります。

正社員登用をゴールに据えた本気支援

私たちの派遣会社のゴールは「派遣契約を継続させること」ではありません。むしろ派遣という経験を経て、正社員登用を実現していく支援を本気で行うことが使命だと考えています。
実際に、スキルアップ研修と営業の伴走支援を活用して、これまで多くの派遣スタッフが正社員登用を実現してきました。派遣という働き方は、「正社員登用の準備期間」として有効活用できる制度なのです。


次章では、営業担当がさらに「キャリア伴走者」として果たしていくべき具体的支援策について、さらに踏み込んでお話しします。

第4章:「契約更新の担当者」ではなく「キャリア伴走者」へ~私たち派遣営業が果たすべき本当の支援~

経理の派遣スタッフが正社員登用に進んでいく上で、決して一人で乗り越えられない壁があります。それは、派遣先の評価や判断が「自然発生的」には動きづらいことです。
派遣先の経理部門は日々の業務に追われ、なかなか派遣スタッフの成長を体系的に評価する仕組みがありません。「いつも助かってるよ」「細かい仕訳までよく気がついてくれて助かるよ」こうした言葉をかけてくれることはあっても、それが次の役割拡大や正社員登用に自動的につながるわけではないのです。
だからこそ、営業担当が「キャリア伴走者」として間に立つことが重要になります。私たちの会社が営業担当に求めている役割は、まさにここにあります。

成長の「証拠」を整理する

派遣スタッフは日々成長していても、本人は「それがどれだけアピール材料になるのか」に気づきにくいものです。
そこで営業担当は、定期的に以下のような「スキル棚卸しシート」を整理します。

  • 現在までに担当した業務内容(仕訳、決算、税務、管理会計など)
  • 新たに習得した知識(研修受講内容も含む)
  • 派遣先での具体的な成果エピソード
  • 次に挑戦できる課題

この棚卸しをもとに、派遣先の担当者にも
「○○さんは今期、○○件の月次決算整理を対応済みです。次は月次全体の取りまとめ補助も任せられるかもしれません」といった具体的な提案型の会話が可能になります。

派遣先面談の「提案者」になる

契約更新面談は、単に「契約を延長するかどうか」を確認する場ではありません。私たちは、成長課題を次の契約条件に組み込む提案の場として活用しています。
たとえば:

  • 決算整理まで経験した派遣スタッフに「次は決算後の税務申告準備も経験させてもらえませんか?」
  • 日次仕訳中心だったスタッフに「月次締めの全体整理もそろそろ任せたいのですが」

こうした具体的な「成長提案」を派遣営業が行うことで、派遣先も「そうか、次の段階へ進めていこう」と意識を持ってくれます。派遣先に「この人を登用するメリット」を営業が可視化して伝えていく役割なのです。

正社員登用条件を「見える化」する

派遣先によっては、正社員登用の基準が曖昧な場合もあります。
「登用制度はあります」と言いながら、実際には過去に誰も登用された実績がない…というケースも少なくありません。
だからこそ営業担当は事前に派遣先へヒアリングを行い、登用基準を可能な限り整理します。

  • 登用対象の実績期間
  • 必要な業務経験の範囲
  • 社内選考のタイミング

こうした情報を派遣スタッフに共有することで、「次に目指すべき具体的目標」がはっきりします。
ゴールが曖昧なままでは、モチベーションも続きにくい。営業担当はゴールを可視化するナビゲーターでもあるのです。


私たちは営業担当に常に伝えています。

  • 「派遣営業は契約更新のためにいるのではない」
  • 「派遣スタッフのキャリア成長に責任を持つのが、経理専門派遣会社の営業だ」

この文化が社内に根付いたからこそ、これまで多くの正社員登用実績を積み重ねることができてきました。


次章では、こうした仕組みを通じて、派遣という働き方が実はキャリア形成にとって非常に有利な環境であることをお伝えします。

第5章:「仕訳の格差社会」だからこそ派遣経理は強くなれる?経理専門派遣会社が描くキャリアの未来?

派遣経理という働き方は、ときに「私は費用科目なんだな」と感じる複雑な現実を突きつけます。正社員の給与は「人件費」、派遣スタッフの報酬は「外注費」。仕訳上の分類は容赦なくその違いを示します。
しかし、私たちは声を大にして伝えたいのです。派遣経理こそ、今もっとも“成長に適した環境”なのだと。
なぜなら、経理という仕事は経験を積み重ねるほど専門性が高まり、市場価値が上がっていく職種だからです。
派遣という働き方は、複数の企業・様々な会計パターン・多様な決算文化を経験ができるのです。
「仕訳の幅広さ」「決算対応の応用力」「税務・法改正への実務適応力」
こうしたスキルは、たとえ今は派遣先の外注費として仕訳されていたとしても、将来的には経理正社員としての強力な武器になります。
そして、私たち経理専門派遣会社は、そこに本気で伴走する覚悟を持っています。
なぜなら、私たち自身もその道を通ってきた当事者だからです。
かつて派遣経理として働いていた時、私たち自身も「いつかは正社員として安定した経理職に就きたい」と願っていました。
でも当時は、その成長を支援してくれる仕組みがありませんでした。
だからこそ、今こうして派遣会社を運営する立場となり、
「派遣スタッフの皆さんには、あの頃の自分たちに欲しかった支援を届けたい」
この思いで制度をつくり、営業教育を行い、毎月の研修を継続しています。

派遣は「準備期間」であり「成長期間」

派遣はゴールではありません。むしろ経理キャリアの準備期間・成長期間として、極めて有効です。短期間で幅広い会計経験を積めるのは、派遣だからこその強みです。
そして、派遣という“成長の場”を、「正社員登用」へとつなぐ本気の支援こそ、私たち派遣会社の存在意義です。

  • 営業は契約担当者ではなく、キャリア戦略の伴走者
  • 研修は形式的な制度ではなく、現場に直結する実務力の強化策
  • 派遣スタッフは「外注費」ではなく、未来の経理部の柱となる存在

私たちはそう信じています。
この考え方に共感してくれる企業とも、少しずつですが確実に連携が広がっています。
派遣先の経理部長から「今の○○さんはもう派遣枠ではなく、正社員としてしっかり採用したい」と声を上げてくれるケースも増えてきました。

仕訳の分類は変わらなくても、「立場の分類」は変えられる

正社員の給与仕訳を入力しながら、「自分はそこに含まれない」と思ってしまう気持ち。私たちは痛いほどよく分かります。
でも、その仕訳を正確に処理できる今のあなたは、間違いなく経理として成長しています。
そして次は、決算整理、税務補助、会計管理、資金繰り、監査対応…と、どんどんスキルの幅は広がっていくはずです。
仕訳の勘定科目は簡単には変わりませんが、あなたの立場は確実に変わっていけます。
そこに向けた支援を、私たちは決してあきらめません。


「仕訳の格差社会」──それは、乗り越えられる段階のひとつです。
経理専門派遣会社だからこそできる本気の支援で、一緒にその先へ進んでいきましょう。
あなたの成長は、数字だけでは測れない未来をきっとつくっていきます。