2024年の経理派遣スタッフの年収は、東京で平均約320万円となっています。例えば、この年収を200万円アップさせて年収520万円とするには、どうしたら良いでしょうか。
2024年のベア(ベースアップ)は33年ぶりに5%と高水準となりましたが、320万円の年収から200万円アップするには、高水準のベア5%でも10年もかかります。一方、短期間に年収を上昇させる人もいます。そこにはどんな秘訣があるのでしょうか。
一般に年収は業務能力と比例していますので、年収を短期間に上昇させる人は、短期間に業務能力を向上させているのです。このようなことは、特別な人だけかというと実はそんなことありません。
こでは経理の派遣スタッフがたった3年で年収を200万円上げる方法を解説いたします。
派遣というと非正規・雇止めなどデメリットばかり話題となりますが、実は派遣のメリットを最大限に生かすことで年収アップを図ることができます。
派遣のメリットとしては、「業務を選択集中できる」、「短期間で業務チェンジできる」などがあります。労働者派遣法第26条労働者派遣契約では、原則として契約書に明記していない業務を依頼してはならないこととなっていますが、スキルアップしたい業務が契約範囲にあれば、スキルアップに集中できるという側面があります。また、派遣の有期契約は、スキルアップが完了したら、次のスキルアップへチャレンジし易いという側面もあります。
つまり業務範囲の限定や有期契約をスキルアップに集中できるというメリットとして捉えることにより、最適なスキルアップ環境を自ら創れるということになります。
一般的に、経理派遣スタッフが行う業務は、過去に経験がある業務となります。そうなると経験の無い業務はいつまでも経験できないこととなり、年収も上がらない、となります。
新たな業務経験を積むには、通常、上司や先輩から業務を教えてもらって「学ぶ」必要がありますが、即戦力採用を基本としている経理派遣では、業務ができることを前提として採用されるため、「学ぶ」という機会は多くありません。それでは、どのように業務経験を積んでいったら良いのでしょうか。
ズバリ、派遣先で時間を作って新たな知識と経験を得る機会をつくることです。
年収の上がらない人の多くは、派遣先で時間をつくらずに、時間に合わせて仕事をしているのをよく見かけます。これでは、いつまで経っても業務の範囲は広がらず年収も上がりません。
派遣契約では、業務範囲が決められているため、その業務が早く完了すると「時間が余る(=時間をつくる)」となります。他人より早く業務を遂行して時間を作り、現状業務の上流工程や下流工程の確認をしたり、知識習得を行なうことで、業務の知見が広がり今後の業務範囲を広げる準備ができるのです。また、「時間が余っている」という状況は、新たな業務を依頼される機会を増やすことになり、実際に業務を依頼されれば対応可能な業務範囲が広がります。
3年で年収を200万円上げたいと思ったら、すべきことは3年後に年収200万円アップを実現するための必要な知識と経験値を決めるということです。例えば、3年後に経理マネージャーレベルになって200万円の年収アップを図ろうとしたときに、経理マネジャーに必要な知識と経験を特定して、3年後の目標とするということです。そして、6か月ごとに目標を分割してマイルストーンを設定していきます。そうすることで、6か月×6回の目標が設定でき行動しやすくなります。
それでは一例を見て行きましょう。
ここでは、3年後のマネージャースキルとして下記のように設定しました。
3.0年後の経験値:月次決算・年次決算・法人税計算・消費税計算・計算書類・予算実績管理
このスキルレベルであれば多くの会社でマネージャーレベルの報酬が期待できます。
次に、半年ごとに分割して目標を設定していきます。
2.5年後の経験値:月次決算・年次決算・法人税計算・消費税計算
2.0年後の経験値:月次決算・年次決算補助・法人税計算補助・消費税計算補助
1.5年後の経験値:債権管理・債務管理・経過勘定・固定資産管理・月次決算補助
1.0年後の経験値:仕入計上・経費計上・売上計上
0.5年後の経験値:入出金管理・経費精算
このように設定することで、半年ごとに知識や経験値を積むべき内容が明確となり、進捗管理も自身でできるようになります。
計画が決まったら計画に沿った業務ができる派遣先を探すことから始めます。但し、対象業務が未経験の場合、採用される確率は下がります。
そこでポイントとなるのが、対象業務の知識を予習(準備)をしておくことです。なぜなら多くの派遣先では、経験者が欲しいと思っていても、なかなか経験者を採用できないという状況があるため、次の候補にあがるのが対象業務の知識を持っている人となるからです。
予習(準備)をしておくことで実務経験が無くても採用されるチャンスが広がりますので、予習をしたうえで次の派遣先を探し、業務の実践を積んでいく。これを繰り返していくことこそが成長の最短コースと言えます。成長スピードの速い人は、自然とこの方法をとっていると言っても過言ではありません。
半年ごとに年収30万円アップを目指すということは、半年ごとに月収2.5万円アップを目指すということで、時給に換算すると半年ごとに約140円アップさせることです。
これは、意外と簡単なのです。なぜなら対応可能な業務が1つ増えるだけで時給140円くらいはアップできるからです。半年ごとに対応可能な業務を1ずつ増やし、半年ごとに年収30万円アップを目指す、そうすると3年で30万円×6回で180万円の年収アップを図ることができ、その次は210万円の年収アップを目指せることになります。
時給140円アップの能力を身に付けたということは、経理をしている間は、ずっと有効なんです。つまり、40年経理をするとすると、時給140円の価値は、140円×176時間/月×12ヶ月×40年=11,827,200円。なんと1,187万円の価値があるのです。業務を1つ覚えたら、1.187万円を将来に亘ってもらえると思ったら、楽しくなりませんか。
多くの経理派遣スタッフにとって、年収を上げていく参考となれば幸いです。