減価償却とは?計算方法やメリット・耐用年数を解説

経理を行なっていると、「減価償却」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。しかし、実際にどのような意味があるのか、またはどのように計算するのかが分からないという方もいるでしょう。
そこでこの記事では、減価償却の考え方について詳しく解説していきます。この記事を読めば、減価償却のメリットや計算方法についても知ることができます。これから経理を担当する方や、会社の経営を考えている方は是非参考にしてください。

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減価償却とは

減価償却とは、資産の耐用年数に対応して1年ごとに金額を計算する方針のことです。
資産には以下のように「有形固定資産」と「無形固定資産」の2種類あります。

有形固定資産 無形固定資産
  • 機械装置
  • 器具備品
  • 建物
  • 建物附属設備
  • 工具
  • ?ソフトウェア
  • 特許権
  • 意匠権
  • 商標権
  • 営業権

資産に分類される勘定科目

上記の例のように、有形固定資産は実体のある資産のことを指しています。一方無形固定資産は、実体のない資産のことを指しています。

減価償却では、有形固定資産も無形固定資産も、時間が経過するとその資産の価値が減少していくと考えられています。そのため、購入した年にその資産の価格を費用として計算することはありません。減価償却では、資産の耐用年数に対応して、時間の経過とともにどれだけの価値が残っているかという考え方をベースにしています。
例えば、100万円分のデスクを購入したとします。デスクは有形固定資産であり、時間とともに壊れたり傷ついたりしてしまいます。購入したばかりのデスクと壊れたデスクでは価値が異なっています。こうした考え方から、デスクを購入した年に「100万円分のデスクを購入しました」と計算するのではなく、「初年度は20万円分、翌年は20万円分、翌々年は20万円分……」という形で計上していきます。

もし5000万円分の資産を購入し、1年で5000万円分全てを経費として計上してしまうと、その年の会社の利益は前年に比べて大幅に減少してしまうことは言うまでも無いでしょう。会社の規模によっては赤字になってしまいます。すると、その会社の取引先や株主からの印象は悪くなり、経営にも大きなダメージを与えてしまいます。減価償却は経費を分散して計上することができるので、このような自体を避けて経営にも大きな負担がかからないようになるのです。

こうした減価償却に基づく費用が、減価償却費です。これは経理に必要な勘定項目のひとつで、減価償却の考え方を採用しています。時間が経つにつれて減っていく資産の価値を、価格として差し引いていきます。このとき、減価償却に当てはまる固定資産は「減価償却資産」と言います。

減価償却を行うメリット

なぜ減価償却を行うのでしょうか。それは、減価償却には以下のように3つのメリットがあるからです。

  • 節税できる
  • 財務負担を減らせる
  • 財政状況が好調に見える

1つ目は、節税できるというメリットです。減価償却費は経費として扱われます。減価償却費を毎年計上していけば、利益が減っていくので法人税を節約することが可能です。例えば、あるとしの当期利益が2000万円だったとします。毎年計上する償却費が200万円だとすると、損益は1800万円という計算になります。すると、減価償却費によって法人税が200万円分節税できるのです。

2つ目は、財務負担を減らせるというメリットです。減価償却では、20万円に満たない資産に関しては「一括償却資産」という制度を適用できます。一括償却資産とは、資産の耐用年数にかかわらず3年ごとに減価償却できる制度のことです。3年ごとに計上できるメリットは、1年あたりの減価償却費が高くなることです。経費が高くなれば利益が低くなるので、結果的に節税になるのです。

そして3つ目が、財政状況が好調に見えるというメリットです。「減価償却とは」の見出しでも触れましたが、億単位の資産を購入すると経費が高くつきます。これを減価償却しないで購入した年に一括で経費にしてしまうと、前年に比べて利益が大きく下がってしまいます。また、場合によっては赤字になってしまうでしょう。会社を支える取引先や株主からしてみれば、「財政が傾いたのでは」と不審に思われてしまい、結果的に取引がなくなり、融資がなくなってしまっては大変です。財政状況をよく見せるためにも、減価償却は大切です。

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減価償却の計算方法(耐用年数)

ここからは、減価償却の計算方法について解説していきます。まず、減価償却の計算方法には以下のように2種類あります。

  定額法 定率法
特徴 定められた耐用年数に応じて同じ金額で計上していく 償却していない金額から毎年同じ割合で償却していく
計算方法 取得価額×定額法の償却率 未償却残高×定率法の償却率

原則として、法人の場合は定率法を用い、個人の場合は定額法を用いることになっています。ただし、該当する税務署へ申請書を提出して承認を受ければ、減価償却の方法を変更することが可能です。法人の場合は、償却方法の変更をしたい事業年度がスタートする前日まで、個人の場合は償却方法を変える年の3月15日までに承認を受ける必要があるので注意しましょう。

まず1つ目の方法が、「定額法」です。定額法とは、定められた耐用年数に応じて同じ金額で計上していく方法になります。

定額法の計算方法は、「取得価額×定額法の償却率」となっています。例えば、500万円で耐用年数が10年の資産を購入したとします。耐用年数が10年の場合、「定額法の償却率」は「0.100」と定められています。すると、計算は以下のようになります。

500万×0.100 =50万

するとこの場合、10年間で1年に50万円償却するという計算になります。

そして2つ目の方法が、「定率法」です。定率法とは、償却していない金額から毎年同じ割合で償却していく方法のことです。

定率法の場合は、「未償却残高×定率法の償却率」で計算します。例えば、400万円で耐用年数が4年の資産を購入したとします。耐用年数が2年の資産の場合、「定率法の償却率」は「0.500」と定められています。すると、計算は以下のようになります。

1年目……400万×0.500=200万
2年目……200万×0.500=100万
3年目……100万×0.500=50万
4年目……50万×0.500=25万

このように、昨年の計算結果に定率法の償却率を足していきます。しかし、この計算を続けていくと終わりがありません。

そこで、定率法では「償却保証額」という考え方を導入します。償却保証額とは、「資産の取得価額×保証率」で求める値で、ある一定の金額を下回った場合に支払う金額のことです。例の場合、保証率が「0.12499」なので、償却保証額の計算は以下の通りです。

400万×0.12499=49万9960

4年目は「49万9960」を下回る計算になるので、償却額は49万9960円となります。

減価償却の会計処理方法

会計処理のやり方は以下のように2種類の方法があります。

  直接法 間接法
特徴 直接、固定資産から減価償却費を差し引く 減価償却累計額を計上して償却額の合計を記載する
メリット あといくら資産価値が残っているかがわかる 資産の取得価格がわかる
デメリット 資産の取得価格がわからない 現在の価値は計算しないとわからない

1つ目は、直接法です。直接法による仕訳とは、直接的に固定資産から減価償却費を差し引く方法のことです。そのため、帳簿価額に記載されるのは固定資産の残高です。例えば、法定耐用年数が10年の資産を50万円で購入した場合は以下のような記載方法となります。

  • 購入額……50万円
  • 耐用年数……10年
  • 償却方法……定額法
  • 法減価償却費……10万円
借方 貸方
減価償却費 100,000円 固定資産 100,000円

直接法で減価償却を仕訳すると、あといくら資産価値が残っているかがわかるというメリットがあります。直接法で記載する場合、資産の価値は貸借対照表上の資産の価格と一致しています。そのため、資産価値が一目でわかるのです。一方で、直接法で減価償却を仕訳すると資産の取得価格がわからないというデメリットがあります。直接法で行う場合は、貸借対照表上に資産の取得価格を記載しません。そのため、取得価格を知りたいときは算出して求めなければならなくなります。

そして2つ目は、間接法です。間接法では、減価償却累計額を計上して、償却額の合計を記載します。すると間接法では、借方に記載されるのは減価償却費勘定です。そして貸方に記載されるのは、減価償却累計額です。もし法定耐用年数が10年の資産を50万円で購入すると、以下のような記載方法となります。

借方 貸方
減価償却費 100,000円 減価償却累計額 100,000円

間接法で減価償却を仕訳すると、資産の取得価格がわかるというメリットがあります。間接法で記載する場合は、取得価額と貸借対照表上の資産の価額は一致します。そのため、算出しなくても一目で取得価額がわかるのです。しかし一方で、間接法で減価償却を仕訳すると現在の価値は計算しないとわからないというデメリットが発生します。貸借対照表上の資産の価額と現在価値が一致していないので、現在価値を求めるには減価償却累計額を元に算出しなければなりません。

関連記事:会計処理の概要と知っておきたい経理処理との違い

減価償却の注意点

メリットが多い減価償却ですが、いくつか注意点があります。減価償却の方法を間違えてしまうと税務署から指摘が入ることもあります。あとから困ったことにならないように、しっかり把握しておきましょう。注意点は以下の3つです。

  • 正確な耐用年数で計算する
  • 現金支出は記載しない
  • 償却中の資産を処分する場合の計上

1つ目の注意点として、正確な耐用年数で計算しましょう。資産ごとの耐用年数は政令で定められています。そのため、正しい耐用年数を知るには公開されている「法定耐用年数表」を参照するのがベストです。耐用年数を間違えてしまうと、計算が間違ってしまいます。気が付かないうちに耐用年数が更新されていたというハプニングが起こらないよう、あらかじめ確認しておきましょう。

2つ目の注意点は、現金支出は記載しないことです。現金支出が発生するのは、固定資産を購入したときだけです。減価償却をする場合、現金支出は発生しません。つまり、減価償却に対応するキャッシュは内部留保となるのです。そのため、キャッシュフロー計算書を作成するときは注意しましょう。

そして3つ目の注意点は、償却中の資産を処分する場合の計上です。何かしらの事情によって償却の最中である固定資産を処分することがあるかもしれません。その場合、資産を失ったとして損失が発生したと考えます。そのため、固定資産を処分する場合は「固定資産除却損」の計上が必要になります。固定資産除却損を計上しないと、資産を持っていないのに償却資産税が発生してしまいます。損をしないためにも、固定資産除却損の計上は忘れずに行いましょう。

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まとめ

この記事では、減価償却の考え方について詳しく解説していきました。減価償却費とは、経理に必要な勘定項目のひとつで、資産の耐用年数によって、時間の経過とともにどれだけの価値が残っているかという考え方を元に計算していきます。減価償却を導入すると、法人税を節約できたり、財務負担を減らせたり、財政状況が好調に見えたりするというメリットがあります。
減価償却には定額法と定率法の2種類がありますが、基本的には個人か法人かによって計算方法は定められています。計算方法や耐用年数を間違えてしまうと、本来計上すべき金額とは異なってしまうので注意してください。

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