年末調整代行とは?主なサービス内容と費用の相場を紹介
年末調整に関する業務は、1円たりともミスできない、難しく重要な仕事です。
経理部や人事部の方にとって、年末調整を行う時期は特に忙しいですよね。
そこで本記事では、年末調整の業務の負担を軽くできる年末調整代行のサービス内容や費用の相場を紹介します。
年末調整に関連する業務の負担を軽くしたい方は、ぜひ参考にしてください。
年末調整とは
年末調整は、毎月の給料やボーナスから差し引かれた所得税を、支払うべき正しい所得税と照合してその差分を調整する作業のことです。
会社員の場合、給料から毎月所得税が差し引かれています。
しかし、この差し引かれた所得税は正しい納税額ではないのです。
実際に支払った納税額と正しい所得税を照合することで正しい納税額がわかるので、払い過ぎていればお金が戻り、不足しているようであれば支払う必要があります。
支払うべき正しい所得税を計算し、誤差があればお金の返金や追加の支払いを確定させることが年末調整です。
正しい納税額の計算方法
まず、正しい納税額の計算するために年間収入額・社会保険料・源泉徴収税額の3つを集計します。
つぎに年間収入額から、給与所得控除額を引き、給与所得額を計算します。
給与所得控除額は年間収入額によって変動するため、下記の表を参考にしてください。
年間収入額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 180万円以下 収入金額×40%-10万円
55万円に満たない場合には、55万円 |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
【参考】国税庁 No1410 給与所得控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm?_fsi=P0RWd7o6
給与所得額が計算できたあとは、給与所得額から従業員から申告のあった所得控除額を引き、課税所得を算出します。
続いて、年調所得税額を計算しましょう。
課税所得に所得税率を乗じて、そこから控除額を引くと、1年間の所得税額を算出できます。
課税所得 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え?330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え?695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え?900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え?1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
【参考】国税庁 No.2260?所得税の税率
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
所得税額から住宅ローン控除を引いた金額が、年調所得税額です。
最後に年調所得税額に復興特別所得税を含む割合である102.1%をかけて、年調年税額を計算します。
年調年税額と源泉徴収した所得税額を比べ、年調年税額が源泉徴収税額より少ない場合には多く支払った分の金額が還付金として戻ります。
逆に、年調年税額が源泉徴収額よりも多い場合は、本来支払うべき税金を支払っていないということですので、追加で徴収されるという仕組みです。
年末調整代行とは
12月の繁忙期の業務をより効率的に行うために、年末調整代行を活用する企業もあります。
年末調整代行とは、年末調整の業務を外部の会社に委託できるサービスです。
年末調整を行う際、住民税源泉所得税や住民税、雇用保険など、さまざまな専門知識が必要です。
知識のない人が年末調整を行うことでミスが発生することや、時間を多く要するリスクがあります。
年末調整代行はこうしたリスクを防止するため、自社に年末調整に関する専門的な知識を持った人材がいない場合に、よく利用されることが多いサービスです。
税理士や社労士、経理代行サービスを行う会社などが、年末調整と一緒に給与計算の業務も一括して請け負うことが多いです。
追加で料金を払うと法定調書合計表の作成や電子申告などのより幅広い業務を委託できる年末調整代行会社も多くあります。
年末調整代行を使う場合の流れ
年末調整代行を使う場合の流れを確認しておきましょう。
年末調整代行は、主に3つのステップがあります。
ステップ@必要な資料の確認をする
年末調整代行を依頼するには、自社で準備しておかなければならない資料があります。
代行してもらう企業側からどのような資料が必要か教えてもらえますが、自社でもしっかり把握しておくと年末調整がスムーズに行えるでしょう。
年末調整を行うために必要な資料は以下になります。
年末調整代行を依頼する際に必要な資料
- 給与所得者の保険料控除の申告
- 生命保険料控除証明書などの詳細がわかる書類
- 扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書、所得金額調整控除申告書(兼用様式)
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書、借入金の年末残高等証明書(残高証明書)
事前に従業員に連絡をして5種類の書類を準備してもらい、年末調整代行会社に提出しましょう。
提出の方法は手渡しや郵送などがあり、年末調整代行会社によっては提出方法が指定されている場合もあります。
もし、年末調整代行会社に提出した資料に不備や未提出の資料があった場合は、再提出の依頼が来ます。
ステップA各種控除額と源泉徴収所得の計算をする
提出した資料の確認を年末調整代行会社で行い、問題なければデータ入力やファイリングをしてもらいます。
そして、各種控除額と年間の源泉所得税を計算し、年間の給与との差額を導き出してもらうことが基本的な流れです。
年末調整代行会社によって対応してくれるサービスの幅が異なります。
年末調整のすべての業務をこなしてくれる場合もあれば、申告書チェックやテータ入力、ファイリングのみといったように、部分的な代行サービスを行っている会社もあります。
すべての業務を委託するか、部分的に委託するか、自社で抱える人材が有する知識やコストなどを考慮して、年末調整代行会社を選ぶとよいでしょう。
ステップB各種書類の通知や送付をする
企業から提出した資料をもとに計算を行ってもらい、12月分の給与の金額を調整し給与支払報告書の作成が完了すれば年末調整代行会社から通知が来ます。
計算した結果、所得税を支払い過ぎていれば従業員の給与が上乗せされ、支払い額が足りていなければ給与から徴収されます。
その後に、収入や税金など細かな情報が記載された源泉徴収票の発行をしてもらい、書類を従業員本人に渡せば年末調整の業務は終了です。
年末調整代行の3つの依頼先
年末調整代行を依頼できる会社は、経理アウトソーシング会社や税理士事務所、社労士事務所の3つがあります。
それぞれ特徴が異なるため、自社が何を重要視しているのかで選びましょう。
依頼先@経理アウトソーシング会社
経理アウトソーシング会社に年末調整代行を依頼するメリットは、コストの安さです。
税理士事務所や社労士事務所は顧問料という形で費用を支払いますが、経理アウトソーシング会社は従業員1人あたりで費用を支払うことが多いため、コストが安くなります。
特に、人数が少ないスタートアップの会社やアルバイトやパートの方が多い企業などは、費用対効果が高くなるでしょう。
また、経理のプロに任せられることで年末調整による作業の負担軽減とミスの防止ができることも、大きなメリットといえます。
一方デメリットは、経理アウトソーシング会社に税理士が在籍していない場合は節税や助成金のアドバイスが受けられないことです。
なかには税理士が在籍している経理アウトソーシング会社もありますが、在籍していない場合もあるため、事前にしっかりと確認しておきましょう。
年末調整の業務負担を軽くするために、高いコストをかけると本業にコストをかけづらくなってしまいます。
そのため、安いコストで年末調整代行を依頼できる経理アウトソーシング会社への依頼がおすすめです。
依頼先A税理士事務所
税理士事務所は、税金に関する法律に強いというメリットがあります。
そのため、税理士事務所に年末調整代行を依頼することで、節税のアドバイスをもらうことができます。
また、正しく税金の申告が行われているかを調査する税務調査があった場合も税理士事務所に対応してもらうことが可能です。
しかし、節税のアドバイスを受けられるような専門的な知識のある税理士に依頼するのであれば、顧問料は高くなるというデメリットもあります。
また税理士は、個人の案件に強い税理士と法人の案件に強い税理士に分かれます。
個人の案件に強い税理士に年末調整代行を依頼してもあまりメリットを実感できない可能性があるため、年末調整代行を依頼する際には、法人の案件に強い税理士に依頼しましょう。
依頼先B社労士事務所
2016年に税理士と社労士の業務範囲が明確になり、年末調整の業務は税理士の仕事と認定され、社労士が年末調整代行を行うことは税理士法違反となりました。
しかし、税理士事務所と協力関係にある社労士事務所は、年末調整業務を行うことが可能です。
社労士事務所は、主に給与計算を依頼している場合に追加で年末調整を依頼できることがあります。
そのため、社労士の強みでもある助成金や補助金についてのアドバイスがもらえることはメリットになります。
年末調整代行会社の費用の目安
経理の専門的な知識を持った経理アウトソーシング会社に依頼をすることで、業務の負担が減りビジネスを効率化することが可能です。
年末調整代行の料金体系は、基本料金と従業員1人あたりの料金を足した会社が多いです。
基本料金の相場の目安は1〜3万円程度で、従業員1人当たりの料金は1千〜3千円程度となります。
たとえば、従業員20人程度の会社が年末調整代行を依頼する場合、9万円程度で依頼できるのです。
従業員数が多くなればなるほど年末調整代行に必要な費用が増えますが、その分年末調整の作業にかかる時間を削減できます。
年末調整代行の費用を抑えたい場合は、比較的計算しやすいアルバイトやパートの方の年末調整は自社で行い正社員の年末調整を代行することがおすすめです。
年末調整代行に関連するサービスの種類と目安の費用
年末調整代行に関連するサービスには、記帳代行と決算代行があります。
記帳代行とは、自社の経理業務の一部である記帳を外部機関にアウトソーシングすることです。
記帳代行の費用の相場は、「仕訳数により費用が変わる」場合と、「1時間あたりの料金制」の場合によって分かれます。
「仕訳数により費用が変わる」場合は、1仕訳あたり50〜100円を1つの目安として、月額1〜3万円ほどかかります。
「1時間あたりの料金制」の場合は、2時間あたり1万円程度からの利用が可能です。
また決算代行とは、決算に必要な決算書や申告書の作成、税務署への申告を代行してくれるサービスです。
決算代行の費用の目安は、どこまでの作業内容を依頼するかによって大きく変動します。
たとえば、税務署への申告のみであれば5万円前後が費用の目安となり、書類作成から申告までであれば15万円前後となります。
年末調整代行を検討されている方でより業務にかかる負担を軽減したい方は、記帳代行や決算代行も検討するとよいでしょう。
関連記事>>経理アウトソーシング(代行)の料金・費用相場
記帳代行とは?業務内容やメリット・費用相場
記帳とは、企業の取引を帳簿につけることを指します。
2014年より白色申告・青色申告を問わず帳簿づけが法的に義務化されたことで悩まれている経理の方も多いのではないでしょうか。
この帳簿づけの作業負担を抑えることができるサービスが、記帳代行会社へ記帳を委託できる記帳代行です。
経理担当者が不在の場合やスタートアップ企業の場合など、新たに従業員を雇い入れる予定がある方は、業務を円滑に進めるためにも記帳代行を検討してみるとよいでしょう。
下記のURLでは、記帳代行のサービス内容とメリットや費用の相場について詳しく解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。
年末調整代行を利用することで年末調整にかかる作業の負担を減らすことができる
いかがでしたでしょうか?
年末調整代行とは、年末調整に関連する作業を外部に委託するサービスです。
年末調整に必要な資料の確認や控除額と源泉徴収所得の計算、顧客への結果の通知までを行ってもらえます。
年末調整代行を依頼できる会社には、経理アウトソーシング会社や税理士事務所などがありますが、依頼する会社の種類によって特徴や費用が異なります。
年末調整業務の状況を確認して、業務過多になっているようであれば外部に委託することがおすすめです 。
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