インボイス制度でフリーランスや個人事業主が取るべき対策とは

インボイス制度が始まりました。フリーランスや個人事業主の方の中には、どう対応したらいいのか迷っている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、インボイス制度とはどのようなものか改めて見直した上で、フリーランスや個人事業主の人が取るべき対策について述べています。課税事業者に転換する場合に使えるお得な措置にも触れていますので、是非最後までご覧ください。

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インボイス制度とは

インボイス制度は、取引にかかる消費税率を明確にし、適切に仕入れ税額控除を受けられるようにするために始まった制度です。

インボイス制度の目的

1989年4月の導入以来、長らく一律での課税が続いていた消費税ですが、2019年より軽減税率が導入されることになり、消費税額の計算がややこしくなってきました。

また、消費税をめぐる不正やミスの問題もありました。消費者が納めた消費税が、消費税として納入されず、合法的に免税事業者の利益になる「益税」の問題もあります。

そこで、これらを是正するために一定の条件を満たす事業者だけが発行できる適格請求書と、適格請求書に基づく適格請求書にもとづく税額計算が義務付けられることになりました。これにより、消費税をめぐる不正やミスは大幅に減らせると考えられています。

そして、2023年10月よりインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まったのです。

インボイス制度における仕入税控除の仕組み

課税事業者が納税する消費税額は、自社の売上時の消費税額(売上税額)から自社が仕入れなどにかかった消費税額を差し引いた分を納税します。この仕組みを仕入税額控除といいます。

例えば、販売価格が5,500円(商品代金5,000円+消費税500円)、その商品の仕入れにかかった代金が2,200円(仕入代金2,000円+消費税200円)だった場合で考えてみましょう。

この場合、商品を実際に購入した消費者と、商品の仕入れを行った事業者とで二重に消費税を納めていることになります。このような二重・三重の課税を避けるために、売上時に受け取った消費税から仕入時に支払った消費税を差し引いて、本来支払うべき消費税額を申告・納税する制度が仕入税額控除です。

上記の例の場合、仕入時に支払った消費税200円が仕入税額控除で差し引かれる金額となり、事業者は売上時に受け取った消費税500円から仕入時に支払った消費税200円を差し引いた300円を申告・納付することになります。

インボイス制度では、この仕入れ税額控除のための計算をするのに、適格請求書が必要となります。

適格請求書は、@課税事業者であること、A適格請求書発行事業者に登録し、番号の発行を受けていること、の2点を満たした事業者が発行できます。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)および適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

4.「税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)および適用税率」と、5.「税率ごとに区分した消費税額等」を併記することにより、より正確に税額を把握することができます。

売上1,000万円以下のフリーランスや個人事業主が受ける影響

年間の売上が1,000万円以下のフリーランスや個人事業主の人は、今まで免税事業者として消費税の納税が免除されていました。

しかし、インボイス登録のためには課税事業者に登録せねばならず、不利益が生じる可能性があります。

具体的にどんな不利益が考えられるのか、見てみましょう。

消費税の納付義務が発生する

消費税分の金額を請求していても、消費税の納税義務がなく、消費税分の金額が実質的には利益となっていました。これを益税と呼びます。

しかし、適格請求書を発行するためには、課税事業者に登録し、適格請求書発行事業者の登録番号をもらう必要があります。

課税事業者になるわけですから、当然消費税の納税義務が発生します。これまで消費税分の金額は益税として、利益になっていたわけですから、消費税の納税義務が課せられることは、実質的には利益が減ることになります。

仕事が減る可能性が高まる

一方で、課税事業者に登録せず、今まで通り免税事業者でいた場合はどうでしょうか。

免税事業者のままだと、適格請求書を発行することができず、取引先は、仕入れ税額控除を受けることができません。仕入れ税額控除を受けられない分、取引先の利益が減ります。

そのため、中には「免税事業者には仕事を依頼しない」という事業者も出てくるでしょう。免税事業者であるという理由で、取引停止になり、仕事が減る可能性があります。

また、仕事がなくなるまでいかなくとも、取引先の事業者から消費税分相当の値下げを要求される可能性もあります。応じれば収入減になりますので、どちらにせよ不利益を被ることになります。

フリーランスや個人事業主がインボイス制度の影響を受けるのはなぜ?

インボイス制度によって影響を受けるのはフリーランスや個人事業主だけではありません。

しかし、今まで免税事業者であったフリーランスや個人事業主は、課税事業者に転換するならば益税として実質的に利益になっていた金額分、消費税を納めなくてはなりません。また、今まで通り免税事業者でいるなら、仕事の減少や報酬の減額に繋がる可能性があります。

事務的な作業の増加だけでなく、金銭的な面での影響が大きいという意味では、年間売上1,000万円以下で免税事業者として活動していたフリーランスや個人事業主が受ける影響は大きいです。

インボイス制度においてフリーランスや個人事業主が行うべき対策

ここまで、インボイス制度によってフリーランスや個人事業主が受ける影響についてみてきました。

ここからは、具体的にどんな対策を取ればいいのか、考えてみましょう。

対策@適格請求書発行事業者に登録する

まずできることは、適格請求書発行事業者に登録し、適格請求書を発行できるようになる事です。

適格請求書を発行できるようにすれば、取引先に不利益が及ぶことはないので、インボイス非対応であることが理由での取引停止や報酬額の減額は起こらないはずです。

適格請求書発行事業者に登録するためには、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請」を持参、郵送、またはe-Taxで提出します。提出してから、持参や郵送の場合は約1ヶ月、e-Taxの場合は約2週間で登録番号が届くとされています。

若干時間がかかるため、課税事業者となり適格請求書を発行できるように動くのであれば、番号を申請している間に他の対策も進めておくとよいでしょう。

対策A納税の計算方法を考える

消費税には、一般課税(本則課税)と簡易課税、2種類の納税方法があります。

簡易課税を選択するには、基準期間(前々年)の課税売上額が5,000万円以下であり、消費税簡易課税制度選択届出書を提出しているなどの要件を満たしている必要があります。

現在本則課税を選択している場合でも、受け取る請求書の発行事業者が免税事業者である場合は、インボイス制度導入後に納税負担が大きくなってしまう可能性があります。そのため、取引内容を再確認して必要に応じて簡易課税制度の利用を検討しましょう。

課税事業者として適格請求書を発行できるようにするのであれば、納税の計算方法も検討しましょう。

おすすめなのは、会計ソフトを導入、アップデートすることです。会計ソフトはインボイス制度導入に合わせてどれもアップデートされています。請求書作成サポートや控え・領収書・領収書の控えの電子保管、確定申告や消費税計算までカバーしたものを選ぶことで、経理事務手続きはだいぶ楽になるはずです。

対策B請求書のフォーマットを用意する

適格請求書に合わせた請求書のフォーマットを用意しておきましょう。

先に述べた会計ソフトなら、請求書を作るのも必要な数値や文言を打ち込むだけで作れますし、修正も簡単です。

対策C課税事業者になるか検討する

現在免税事業者として活動しているフリーランス・個人事業主限定にはなってしまうのですが、課税事業者になるか検討しましょう。一度課税事業者に転換すると、2年間は免税事業者に戻れないので、よく考えましょう。

順番としては課税事業者としてやっていく決意が固まってから、適格請求書発行事業者の登録申請です。

インボイス制度を機に、免税事業者から課税事業者に切り替えた場合の負担軽減措置として、2割特例と少額特例という措置がとられました。

2割特例は、インボイス制度に対応し、適格請求書発行事業者になるために免税事業者から課税事業者になった事業者向けに、一定期間納税する消費税額を売上税額の2割とする負担軽減措置のことです。2割特例を使うと、本則課税や簡易課税に比べて、大幅に税負担が軽くなります。

また、少額特例は国内で行う少額(税込1万円未満)の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除ができるというものです。これは取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係なく、免税事業者であっても同様です。

一度の仕入れの金額が税込1万円未満である必要があるので、例えば7,000円のものと5,000円のものを同時に仕入れて支払い金額が12,000円だった場合には、少額特例の対象となりません。

2割特例や少額特例のような措置をうまく活用し、インボイス制度対応に伴う金銭的負担を少しでも軽減したいものです。

インボイス制度の適用による収入の変化はあるのか

インボイス制度の適用による収入の変化はあるのでしょうか。免税事業者の場合、課税事業者の場合に分けてみていきましょう。

免税事業者の場合

インボイス制度が導入されてからも免税事業者としてやっていく場合には、適格請求書を出せないことを理由とした取引の停止、報酬の減額を求められる場合があります。結果として収入は減少することとなります。

また、インボイス制度導入を機に課税事業者に転換する場合も、今まで免除されていた消費税の納税義務が発生するので、収入は変わりませんが、支出は増えます。

対策としてはより単価の高い仕事に切り替える、取引先に「どうしてもこの人に頼みたい」と思わせるだけの付加価値をつけるなどがあります。

課税事業者の場合

元々課税事業者の場合には、インボイス導入前から消費税を納税しているため、インボイス導入が収入に与える影響はさほどありません。

適格請求書を出すために事務作業が煩雑になるなどの変化はありますが、会計ソフトを活用すれば、負担が抑えられるでしょう。

インボイス制度でフリーランスと個人事業主が注意すること

インボイス制度導入で、フリーランスで働く人や個人事業主の人が注意することは以下の2点です。

注意点@適格請求書の書き方を理解する

まず、適格請求書の書き方を理解しましょう。

インボイス制度の解説書もたくさん売られていますし、セミナーや、当ページのような解説サイトもあります。

インボイス対応の会計ソフトを使えば、必要事項を入力するだけで適格請求書を作ることができます。また、適格請求書の控えの保存期限は7年ありますが、会計ソフトで適格請求書を作れば、一緒に控えの保存もできるので、便利です。

注意点A資金繰りに気を付ける

令和5年分の個人事業主の消費税確定申告と納付の期限は令和6年4月1日です。このタイミングで、1年分の消費税を納付する必要があります。

まとまった金額が出ていくことを念頭において、資金繰りをする必要がありますので、注意しましょう。

インボイスには適切な対策を

ここまで、インボイス制度とインボイス制度に関する注意点について見てきました。

インボイス導入により、経理事務作業の負担が大きくなった、少しでも負担を軽減したい、会計ソフトを入れたい、アウトソーシングを検討したいという声は多く聞かれます。

インボイス対応でお困りでしたら、是非一度RSTANDARDにご相談ください。

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