支払調書と源泉徴収票は違う?提出義務の対象やルール・記入方法

経理担当者が毎年作る法定調書の一つが支払調書です。
支払調書は源泉徴収票と似ているものの、対象や関連する規定が異なります。

そこで本記事では、支払調書の提出義務や該当職種、種類や記入・発行方法、効率化のポイントなどを解説します。
個人事業主との取引や外注が多い企業の方、支払調書作成の業務を改善したい方などは、ぜひ参考にしてください。

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支払調書とは

給与や報酬を支払う事業者は、支払いが確定した日の翌年1月31日までに、「誰にどのような内容でいくら支払ったか」を示す法定調書を、税務署に提出することが義務付けられています。法定調書は全部で60種類あり、大きく源泉徴収票と支払調書に分けられます。

フリーランスや個人事業主に支払った報酬や外注料金が一定額を超えた場合、事業者があらかじめ所得税を源泉徴収し、支払先に代わって税務署に納めます。
フリーランスや個人事業主が確定申告した際、申告内容が正しいものであることを、税務署が判断するために必要な書類が「支払調書」です。

支払調書の発行義務があるのは、源泉徴収義務者のみです。
源泉徴収義務者とは、従業員を雇用して給与を支払っている上、源泉徴収の対象である報酬を支払っている法人や個人・学校・官公庁・人格のない社団・財団などを指します。
また、報酬の支払先に対して、支払調書を交付する義務はありません。

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源泉徴収票との違い

源泉徴収票とは、従業員に対して支払った給与や退職金・公的年金の年間支払額、源泉徴収税額などを記載した書類です。源泉徴収票は税務署に提出するだけでなく、支払先である従業員に対しても交付しなくてはなりません。

一方、支払調書はフリーランスや個人事業主に対する、報酬・外注料金・契約金の支払内容や支払額・源泉徴収額を記載します。また、あくまで税務署に提出するのみでよく、支払先に交付する義務はありません。

関連記事>>経理担当なら知っておきたい源泉徴収制度とは?

支払調書の該当する職種

支払調書の提出義務は、全ての職種・業務に当てはまるわけではありません。
誰に対しどのような支払いを行った際に提出しなくてはならないのか、支払調書の該当範囲はそれぞれ、所得税法や租税特別措置法・相続税法などで定められています。

例えば、外交員やプロボクサー、バー・キャバレーなどのホステスの報酬で、同じ相手に支払う年間合計金額が50万円を超える際、馬主に支払う1回の競馬の支払賞金額が75万円を超える際、プロ野球の選手などに支払う報酬・契約金が5万円を超える際などは、支払調書の提出が義務付けられています。

対象外となる場合

原稿料やデザイン料として、同じ相手に支払う年間合計金額が5万円を超える際は、支払調書を提出しなくてはなりません。
ただし、原稿料においては文筆業務に係る報酬・料金は当てはまるものの、選考料や審査料・受賞料金などは対象外となります。また、支払う報酬・料金に制作・施工・設置までの料金が含まれる際は、デザイン料のみが対象です。

報酬・料金の支払先が法人であっても、提出範囲に当てはまる時は、支払調書の提出義務が課せられます。

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支払調書の種類

支払調書は支払先や報酬・料金の内容ごとに作成し、複数の種類が存在します。
ここでは、個人事業主や自営業者に関係が深く、一般企業が扱うケースが多い、代表的な4種類の支払調書を見ていきましょう。

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

複数種類ある中でも作成頻度が高く、一般的に言う支払調書が意味するものが、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」です。
弁護士や税理士などに支払う顧問料、ライターや画家に支払う原稿料やデザイン料、プロ野球選手やプロボクサーへの報酬、馬主に支払う競馬の賞金、社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬などについて、1年の合計金額が一定額を超えた際に提出します。

不動産の使用料等の支払調書

不動産業を営む個人や法人が、家賃や地代などの不動産使用料を支払った場合、提出する義務があります。不動産や不動産の上に存する権利、計20トン以上の船舶や航空機の賃借料、不動産の上に存する権利の設定の対価などについて、同一人に対する15万円以上の支払いが対象です。ただし、不動産業を営む個人が、主に賃貸借の代理・仲介を目的とした事業を行っている場合や、法人に家賃・賃貸料のみを支払っている場合は、提出する必要がありません。

不動産等の譲受けの対価の支払調書

不動産業を営む個人や法人が不動産を譲り受け、その対価を支払った際に提出する支払調書です。ただし、不動産や不動産の上に存する権利、計20トン以上の船舶や航空機を購入した際、同じ相手に100万円を超えて支払ったケースに限ります。不動産業を営む個人が、主に賃貸借の代理・仲介を目的とした事業を行っている場合は、提出義務がありません。
また、実際には譲受だけでなく、交換・公売・収用・競売・現物出資なども、提出対象に含まれます。

不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書

法人や個人が不動産の売買や賃貸のあっせんを依頼し、同じ相手に対し15万円以上の手数料を支払った場合、提出する支払調書です。不動産や不動産の上に存する権利、計20トン以上の船舶や航空機の売買・貸付けのあっせん手数料の対価が対象となります。 ただし、すでに「不動産の使用料等の支払調書」「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の「あっせんをした者」欄に記載している場合は、再度提出する必要がありません。

支払調書提出の義務

支払調書は規定された職種・金額の範囲に該当する場合、税務署に提出しなければなりません。提出義務があるのは、従業員を雇用して給与を支払っている法人や個人・学校・官公庁・人格のない社団・財団などの「源泉徴収義務者」です。
個人事業主の場合でも、人を雇っている場合は、源泉徴収義務者に該当します。
反対に、外注料金や報酬を支払っていても、人を雇っていなければ提出義務がありません。

いつまでに提出するのか

支払調書は、報酬や料金・賞金の支払いが確定した日の翌年1月31日までに、税務署へ提出しなければなりません。
提出後に誤りが見つかった場合は、訂正して再提出が求められます。

また、支払調書の提出方法は「書面による提出」「CDやDVDなどの電子メディアによる提出」「e-Tax(国税電子申告・納税システム)の利用」の3種類です。
一般企業では、支払調書の用紙を作成して提出するケースが多いです。

提出しなかった場合のリスク・罰則

支払調書の目的は、税金を正確に徴収することです。
税務署は脱税を防ぐために、支払いを受けた者からの申告内容を、支払先が提出した支払調書と照らし合わせながら確認しています。

提出義務がある支払調書を期日までに提出しなかった場合、所得税法の第242条に明記されている「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられる恐れがあります。
なお、確定申告とは異なり、提出期限が遅れても追徴課税などの加算税は発生しません。

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支払調書の記入方法

ここでは、一般企業で作成頻度が高い「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の記入方法を項目別に確かめていきましょう。

支払を受ける者

支払調書の上部にある「支払を受ける者」とは、報酬や料金を支払う相手を意味します。
住所(居所)または所在地、氏名または名称、個人番号(マイナンバー)または法人番号を記入します。なお、個人番号は12桁、法人番号は13桁であり、どちらも右詰め記入です。
支払調書を作成する時点での、各項目の最新情報をチェックしましょう。

区分

「区分」欄には、何に対してどのような報酬・料金を支払ったのか、支払内容の名称を記入します。例えば、専門家関連では「弁護士報酬・税理士報酬・診療報酬」、作品関連では「作曲料・書おろし印税・著作権・脚本料・原稿料・翻訳料・契約金」、その他にも「講演料・教授料・ホステス報酬・広告宣伝のための賞金」などが挙げられます。

細目

「細目」欄では「区分」欄で記した内容をより具体的に説明します。
例えば、印税が発生する作品名、原稿料・翻訳料の支払回数、弁護士報酬が支払われた事件名、広告宣伝のための賞金名、講演料・教授料が支払われた講義名など、補足的な内容を記します。

支払金額

1月1日から12月31日までの1年間で支払った合計金額を記入します。
実際に支払った金額のみでなく、未払いの報酬や控除額以下で源泉徴収されなかった支払についても記入が必要です。
なお、未払い分を記入する際は、「支払金額」欄を二段に分けて、上段に未払い額・下段に年度内の支払確定金額を消費税込みで記入しなくてはなりません。

源泉徴収税額

1年間の支払金額に対して源泉徴収した金額(所得税と復興特別所得税の合計額)を記入します。また、未払いの報酬に対する源泉徴収で未徴収のものがある場合、「支払金額」欄と同様に二段に分けて記入しなくてはなりません。
ただし、「支払を受ける者」が災害などの影響により、報酬に関わる源泉徴収税の猶予を受けた場合は、猶予分は含めません。
源泉徴収額は「支払合計金額×所得税と復興特別所得税をあわせた税率(10.21%)」で求められ、1円未満の端数は切り捨てます。

摘要

診療報酬に家族診療分がある場合や、「支払を受ける者」が源泉徴収税の猶予を受けていたり、免除証明書を提出していたりする場合など、特有の事由がある際にその旨を記入する欄です。

支払者

報酬や料金を実際に支払った法人や個人の詳細情報を記す欄です。
支払者の住所(居所)または所在地、氏名または名称、電話番号、個人番号(マイナンバー)または法人番号を記入します。

マイナンバーは必要か

「支払を受ける者」「支払者」ともに、法人の場合は法人番号を、個人の場合はマイナンバーを記入する欄があります。そのため、支払先である個人事業主やフリーランスの本人確認と、マイナンバーの収集を事前に行わなければなりません。
マイナンバーは重要な個人情報であるため、利用目的を明確に伝えた上で、漏洩や悪用が起きないよう、慎重に扱わなくてはなりません。

支払調書発行を効率化する方法

2月の確定申告を考えると、支払調書の発行は1月頃に行うのが望ましいです。
12月の年末調整から支払調書の発行・確定申告など、企業の経理担当者は日々の業務も並行して行いつつ、年末年始にかけて多忙な日々を過ごすことになるでしょう。
また、複雑な計算が多い経理業務では、ヒューマンエラーが避けられず、経理担当者にプレッシャーがかかりやすいです。

経理担当者の負担を少しでも減らし、支払調書の発行を効率化するためには、経理のアウトソーシングを依頼するのが有効的です。経理アウトソーシング業者には、税理士や司法書士などの専門家が在籍している場合が多く、正確で最適な経理業務が期待できます。

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支払調書の発行方法

支払調書の様式は国税庁のホームページから、手書き用と入力用ごとにダウンロードできます。また、発行枚数が多い場合は、エクセルを利用するのも効果的です。
特に、毎年同じ支払先がいる場合は、過去のデータを保管しておくことで、活用して作業負担を軽減できます。
他にも、近年では経理業務を効率化する、経理・会計ソフトが続々と登場しています。
ボタンひとつで税金や保険料の計算や、源泉徴収票・支払調書の作成を簡単に行えるものを導入すれば、業務の効率化に繋がるでしょう。

支払調書における注意点

最後に、支払調書を発行する際の注意点を挙げます。

源泉徴収対象の報酬・料金を確認する

支払調書を作成する際は、支払った報酬や料金が、全て源泉徴収の対象であるかを確認しましょう。例えば、講演料については、車代や取材費などの名目で払った金額も源泉徴収の対象に含まれます。他にも、弁護士や司法書士に支払う報酬についても、謝金・調査費・旅費や宿泊費などの支払は源泉徴収の対象です。
ただし、支払者が直接支払った金額や、国に対する登記や申請にかかる、登録免許税や手数料などは対象でありません。

源泉徴収額は消費税を含めた金額で算出する

源泉徴収額は、原則として消費税を含めた金額で計算します。
ただし、請求書において報酬・料金と消費税が明確に分かれて記載されている場合は、報酬・料金の金額だけを元に計算して問題ありません。
トラブルを避けるため、支払先と事前に認識を合わせておくと安心でしょう。

支払調書に未徴収額分も記入する

支払調書の「源泉徴収額」欄には、1年間の支払金額に対する源泉徴収額を記入します。
ただし、報酬が未だ支払われておらず、徴収できていない源泉徴収分がある場合でも、記入しなくてはなりません。
未徴収分を記入する際は、「源泉徴収額」欄を二段に分けて、上段に未徴収分・下段に年度内に確定している源泉徴収額を記入します。

業務を簡易化するためには、12月の支払いが全て終了してから、または年度内に新たに報酬が発生しないことを確認してから、支払調書の作成に取り掛かるのが効率的です。

税務署用はマイナンバーを記入する

税務署への提出用の支払調書には、支払先・支払者両方のマイナンバーを記入することが義務付けられています。ただし、支払先本人に交付する際は、個人情報漏洩のリスクや「特定個人情報の提供制限」に抵触する恐れがあるため、マイナンバーを記入しません。
法人との取引において法人番号を記入することは問題ありませんが、個人事業主やフリーランスとの取引の際は十分に注意しましょう。

支払調書は正確に効率よく発行しましょう

いかがでしたでしょうか。
今回は支払調書の提出義務に関わる条件や記入・発行方法、注意点などを解説しました。
近年、ワークスタイルが多様化する中で、フリーランスや個人事業主と取引をしたり、外注したりする機会が増えているでしょう。
スムーズな取引を進めて企業の信用度を維持するためにも、税金や経理関係の環境を万全に整えることが重要です。日頃から支払調書に関わる適切な知識を蓄えましょう。

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