【実話】経理の派遣スタッフから社長になった話!

総務省の「労働力調査」によると、派遣社員の数は2005(平成17)年に106万人でしたが、それ以降増加傾向にあり、2023(令和5)年には156万人と約1.47倍になっています。その要因は、経済動向による影響や働き方の多様化などが主なものと言われています。特に顕著なのは、従来より行われてきたコスト削減により人件費の圧縮や人件費の変動費化が進み、企業マインドが正社員から派遣スタッフの雇用へとシフトしてきているためと言われています。
今回は、このような環境でも私が派遣社員から社長になった話をします。

 


派遣社員になったきっかけ

当時34歳だった私は田舎の会計事務所を退職しました。9年間勤務していましたが、「自分にはもっと何かできるはず」と思って東京に戻って働く決意をしたのがこの頃です。当時は、WEB面接なんてありませんから、中途採用の就職活動も大変でした。そこで、すぐに仕事を紹介してくれそうな派遣社員という選択をしたのです。紹介されたのは、某ホテルの経理部でした。34歳の派遣社員なんて恥ずかしいという思いも正直ありましたが、スキルアップする第1歩目だと思って最高の品質の仕事をしようと全力で仕事をしていました。当時、生活のためにダブルワークをしていて、ホテルを退社後は別の会社で深夜12時まで、そして土日祝祭日も1年中働いていました。今なら完全に労働基準法に抵触するレベルでしたが、ホテルの仕事は絶対に手を抜かないと心に決めていました。

 

派遣社員からいきなり部長へ!

ホテルで働いていたころの働きぶりは、自分の仕事だけでなく他の経理スタッフの仕事や上司の仕事も全部覚えようと心がけていました。なぜなら、「自分にはもっと何かできるはず」と東京に出てきたのに、自分の仕事だけしていても成長がないと思っていたためです。幸いにも、会計事務所で経験した法人税法、消費税法、そしてPCスキルが役に立ち部員や上司そして監査役の信頼を得ることができたことがとても大きかったと思います。また、ダブルワークしていたため、時間内に仕事を終えるだけでなく最高の品質の業務を継続していた結果、なんと!派遣社員として働き始めてから丁度1年後に「部長にならないか」という打診があったのです。その理由は、前任の部長が体調を崩し、適任者は私しかいなかっためと言うことでした。その時、自分の仕事だけでなく、「全部やってきて良かった」とつくづく思いました。この経験が、今後の成長への礎となったのは言うまでもありません。

 

2年連続で100万円の年俸UPを!

ホテルの部長職の打診があったとき、派遣社員の時の年俸に100万円の上乗せを打診しました。なぜ、100万円の上乗せを要求したかというと、若いころアメリカにホームステイしていて、アメリカ社会は自分のスキルに応じた契約金額を交渉している人が多いと知っていたからです。ホテルの部長職と言っても契約形態は契約社員であったため交渉してみようと思い、その結果、交渉は成立しました。この時、ようやくダブルワークをやめることができ部長職に集中しました。部長になってからも最高の品質の仕事を心がけ、なんと翌年も100万円UPの交渉が成立しました。しかし、その次の年、ホテルを退職することになります。その理由は、全ての仕事を習得してしまったためスキルアップできるものがなくなったからです。安定より成長を選択したということです。

 

2年おきに転職!

ホテルを退職後、金融大手から高い報酬で内定を頂きましたが、それより150万円も低い報酬の医薬系のIPO(新規株式公開)準備会社に就職しました。理由は、自身のスキルアップのためにIPO準備会社が最善と考えたためです。就職して2年経った頃、責任者として経理財務領域のIPO準備は全て整ったのでしたが、業績等の理由でIPOができず、ここから2年おきに転職することとなります。何故2年おきなのか?その答えは、転職の判断材料が常に「スキルアップできる領域が充分あること」、「全て習得したら次を探すこと」だったことから、概ね2年おきに転職することとなったのです。

 

順調だった転職が一転?

スキルを確実に蓄積して転職を順調に繰り返し、年俸も着実にUPしていたころ、ある日どこからも内定をもらえなくなりました。その理由は、年齢と転職回数です。高年齢と転職回数が多いのが敬遠されたからです。このとき初めて、アメリカみたいにはいかないものだと感じ不安を抱いたものです。しばらくしていると1社から声がかかりました。IPO準備会社の経理部です。しかし、そこは、色々な意味で誰も手が付けられないほど「ぐちゃぐちゃ」な状態でした。何人もの人たちが入社してきたけれど整備ができずに辞めていったと聞かされました。幸い私は、とても多くの会社で経験してきたことで、その状態を苦にするどころか、とても「やりがい」を感じて取り組み整備を行いまいた。そしてまたこれまでと同じように改善するところが無くなってしまいました。

 

最後の道が起業!

スキルUPのために転職してきた人生でしたが、年齢や転職回数といった敬遠される領域に入ったことで、考え方が大きく変わりました。会社を起業して様々な会社の支援をしていくことが、自分や社員がいつまでもスキルアップできて、クライアントも喜んでくれるかもしれないと。こうして、バックオフィスを支援する会社を設立し、今でも社員とともに自身もスキルアップしつづけている日々を送っています。

 

さいごに

派遣社員だからダメなんてことは全くないです。私は、派遣社員だからできることも多いと思っています。派遣社員だからこそ、色々な会社や業務領域を経験しスキルを蓄積できると思っています。要は、スキルを確実に積んでいけば道は必ず開けるということなんです。すぐに道は開かなくても「信じてスキルを磨く」ことが一番大事だと思いますし、振り返ればそういう行動が人生を豊かにしてくれると思います。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。多くの派遣社員の参考になれば幸いです。